2024年 02月 19日
雨水 u su i
それは、雨の記憶。
闇の世界に生きながら、海野は時折この世界へも足を踏み入れていた。……けれど、決まって人通りのとぎれる時間。
雨が、降ってきていた。
……目を閉じてじっとその中にからだを浸す。
しずくの落ちる、音。
海野はそのときはじめて、人の『気配』を感じた。
「風邪、ひきますよ」
それが海野が最初に見た“武士”だった。
気がつくと“彼”は目の前にいた。
「これ、さしてってください。・・・・・・オレん家(ち)、近いから」
そう言って海野にカサをぽんと手渡す。
「じゃ」
一瞬のことに、されるがままになっていた海野は、ようやく我に返った。
「おい!」
走り去る“彼”を呼ぶ。
「気をつけて」
振り返った“武士”は笑顔で、海野にそう言ったのだった。
『君はそれ以上~出逢い』 雨水(うすい) より 一部抜粋
真実(リアル)はさりげなく
何かを魂に落していく
刹那に どれほどの『氣配』が交錯していたのか
認識し 意味を成すのは
ずっと後のこと
何処かでみた景色の如く
強く 深く
鮮やかによみがえる
光にも似た
そんな瞬間が
人の生には 時としておとづれる
凍てついた魂(こころ)に 器(からだ)に
再びいのちの灯が宿るときを
信じていたい
廻る魂を
愛していたい
☆以前 別のブログに描いた詩を 再びアップしています☆
by ai_iro34
| 2024-02-19 15:59
| たいせつなもの
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